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自己集合性ペプチドの開発と再生医療応用

ナノファイバー形成ペプチドの1つとして,アルギニン(R),アラニン(A),アスパラギン酸(D),アラニン(A)が4回繰り返されたRADA16ペプチドが知られます。

RADA16ペプチドの分子中央のアラニンをグリシン(G)に置き換えたA8Gペプチドを開発しました。RADA16ペプチドは,主に一本鎖から成るナノファイバーを形成しますが,A8Gペプチドは複数本のファイバーが束なったバンドルファイバーを形成することが明らかになりました。

A8Gペプチドのヒドロゲルの方が,RADA16ペプチドのヒドロゲルよりも機械的強度が高かったことから,グリシン導入によって生み出されたnmスケールの構造変化が,マイクロスケールの特性に影響したと考えられます。

さらに,A8Gペプチドのヒドロゲルは,加熱により溶液(ゾル)に転移しました。同一条件で,RADA16ペプチドのヒドロゲルは溶液への転移を示しませんでした。

以上より,グリシン導入によって,一見両立し得ないゲルの機械的強度上昇とゲルゾル転移能を併せ持つペプチド材料の開発が可能になることを実証しました。

再生医療応用に向けた材料開発も,現在進めています。

細胞の足場として働く細胞外マトリックスは,分化や移動など,様々な細胞活動に関わる生体組織です。従って,細胞を培養するメディアや,組織再生を促す材料として,細胞外マトリックスと類似の機能を示す材料は注目されています。

細胞外マトリックスは,コラーゲンなどの繊維状タンパク質から構成されています。私達の研究室では,同様に繊維状構造を形成する自己集合性ペプチドを開発し,人工細胞外マトリックスとして応用することを目指しています。

有機合成によって作ることができる短鎖ペプチドを利用することで,様々な構造から成るペプチドを効率的に作り,機能化することができます。

また,生物由来材料とは異なり,ロット差が小さく,感染性リスクが低い点もメリットとして挙げられます。

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親水性アミノ酸と疎水性アミノ酸を交互連結した両親媒性ペプチドは,水中で自発的にβシート状に一次元自己集合し,ナノファイバーを構築します。

多数のナノファイバーが絡まり合うことで,巨視的にはゲル(ヒドロゲル)を形成します。一般に,発達した自己集合体を構築する上では,剛直な分子が有利と考えられます。

従って,天然アミノ酸の中で最も構造自由度の高いグリシンは,ナノファイバー形成ペプチドをデザインする上ではほとんど用いられることはありません。しかし,この構造自由度は,自己集合構造に多様性を与え,また刺激に応答して集合形体を変化させるなど,新たな特性,機能の実現につながるとも考えられます。

私達の研究室では,この可能性に着目し,グリシンを導入した自己集合性ペプチドの開発と機能解析を行っています。

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