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膜変形分子材料の開発

細胞活動ではリン脂質からなる細胞膜が膜変形することで、物質輸送やシグナル伝達などの様々な動的機能が実現されています。このようなリポソームの膜変形を人工的に実現し、制御することができれば、細胞活動を模倣した魅力的な機能性材料の開発が可能になります。しかし、従来の膜変形は、加熱や浸透圧印加によって行われ、生体環境に適用することが困難でした。

私達の研究室では、膜タンパク質などの生体モチーフに着想した人工分子を設計することで、生理的条件で様々な膜変形を行う分子材料の開発を行っています。その技術を基盤に、「膜変形を利用した材料科学」の構築に挑戦しています。

AzoMEx-1.png

細胞は、細胞外部から生体高分子を取り込む際に、膜を内側に陥入させるエンドサイトーシスを行います。私達は、エンドサイトーシスに類似の膜変形を光で駆動する分子AzoMExの開発に初めて成功しました。青色光に応答して構造変化し、膜を拡張する分子機械AzoMExをリポソームに組み込み、光を照射するすると、リポソーム外部から内部への分裂が誘導されました。AzoMExと相互作用するウイルスなどの生体高分子を共存させた状態でエンドサイトーシス様分裂を誘導すると、高効率でウイルスがリポソーム内部へと封入され、外部環境から保護されることを明らかにしています。保護効果を利用して、封入したウイルスを生体内デリバリーすることにも成功しました。能動的物質輸送を可能にする分子AzoMExは、低分子から高分子まで様々な物質をリポソームに取り込み、生体内輸送を可能にする膜変形材料として、広く生体応用が期待されます。 (Journal of the American Chemical Society 2023)

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